書きたいときに書きたいことを書きたいだけ。

元編集者兼ライターで、現在はWebサイト制作・運用に携わるピーターが気になったあれこれや、日々感じたことについて。最近ちょっとだけまじめ。Twitter@PeterK723

【読書ノート 004】小説版 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則

小説版 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則

ジョージ・S・クレイソン/著(文響社) 2021年1月14日発売

2021年2月6日読了

 

感想

まじでめちゃめちゃおもしろかった。本当に。すっっっごくおもしろかった。

2019年に発売された漫画版が、話題になっていたことは知っていましたが…そちらは絵柄があまり好みでなく、読まずじまいになっていました。でも、もっと早く読むべきだったと大いに後悔しました。それくらい、学ぶことが本当に多かったです。読み終える前から、少しずつ行動が変わりました。2019年に読んでいたら――今頃私は自分の浪費癖と決別できていたかもしれません。うぅ。

・タイトルに「大富豪の教え」「お金」「黄金法則」なんて強い言葉が並んでいるので、私のように"お金の稼ぎ方を紹介している本"という印象を持っている方もいるかもしれません。しかし、実際は違います。

・本書で綴られているのは、お金稼ぎのためのきなくさいテクニックではなく、お金との向き合い方や心構えです。"これさえ読めば簡単に大金持ちになれるはず!"なんて期待を寄せている方には、向かない本です。

 

書かれている内容が難しいからではありません。むしろ、バビロンという都市を舞台にした(歴史ファンタジー的な)物語なので、登場人物たちの視点を通して「黄金法則」に触れることができ、理解しやすいくらいです。誰でもすぐに実践できると言っても過言ではないくらいシンプルな法則ばかりですが、それらは継続しなければ全く意味がありません。

・「収入の1/10を貯金せよ」という法則を例にあげてみます。この法則は、ひと月だけ実践するのはすごく簡単です。しかし、それを翌月も行い、半年間継続し、1年間実行するとなると簡単にはいかないと思うのです。その「簡単にはいかない部分」も、本書では登場人物たちの苦悩として描かれています。彼らがどのように乗り切るのか、もしくは、乗り切れなかった人物たちはどのような思考をもっていたのかなど、最初から最後まで学ぶことの詰まった1冊です。

 ・直接的な関係はありませんが、『7つの習慣』を読んでいる方・身についている方はすんなり読めると思います。根底にあるメッセージがなんとなくだけど通じている気がするのです。

 

覚えておきたいこと

 ・稼ぎの一部(目安として月給の1/10)を必ず手元に残す習慣をつける

→「今月は残せなかった」ではなく、手元に残す分を除いた額(目安として月給の9/10)で生活するように計画する。「稼ぎの一部を残す生活」を実践してみても、生活はさほど苦しくならない。"買いたい"という衝動や"贅沢したい"という欲求をコントロールすることが大切。

・生活費が収入をオーバーしている場合は、欲望に優先順位をつけることで、お金の使い道を見直す

・「意志」ではなく、「自らに課した義務をやり遂げる不動の決意」をもって稼ぎを手元に残す。その決意が、大きなことをやり遂げるために必要な自信となる。

・(商売、儲け話に関して)難しくて実行不可能だと感じることには、そもそも手をつけない。

 

本書で語られている投資のポイント

①元本を確保する

②落とし穴のありそうな 投資話にはのらない

③「自分なら損はしない」というように、自分の知恵や知識を過信しない

④望んだタイミングで換金できるものに投資する

⑤適正な利息を間違いなく回収する

 

・"幸運の女神"は、のろまな人や優柔不断な人を好まない。のろまで優柔不断な結果、好機を逃す(=幸運の女神に嫌われる)

・好機をつかめないのは、理由もなく物事を先延ばしにする癖が原因。大切なのは行動する力

・好機は、何もしない人に与えられた偶然の産物ではない。好機を逃さずモノにする努力の結果。

・"労働は生涯最良の友"。働くことを嫌うよりも、友のように扱い、自分から好きになるように努める。

・良く為された労働は、たとえ主人や上司が評価しなくても、為した者に益をもたらす

 ↑この言葉にとても胸がアツくなりました……。うん。"評価されないなら頑張らない"なんて言ってないで頑張ります。自分のためにも。

 

 

「バビロン」を読んで変わったこと

・私はこれまで「口座の残高が0円にならなければいい」というスタンスで、日々好きなようにお金を使ってきました…が、まずはそれをやめます。

・試しに先月の収支を計算してみたら、残高はあるのに完全に支出が収入をオーバーしていました。カードの請求額(家賃は含まれていません)が給与とほぼ同額でした。全く自覚していなかったし、一体何にそんな使ったんだ?って思うくらい記憶に残らない消費をしてしまっていたので震えました…

・家計簿をつけ始めました。おかげで無駄遣いをすることに罪悪感が芽生えるようになりました。

・投資や保険について調べ始めました。

・節約の(…というより、無駄をなくす)ために、買い物の仕方を工夫したり、自炊の頻度が増しました。

 

総評

・全人類読むべし

 

 

予告

・「インタフェースデザインの心理学」はお家読書用にして、今日届いた「マノン・レスコー」を持ち歩き本にする予定です

・引き続き1月に読んだ本のアウトプットが追い付いていません……

【読書ノート 003】会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

井上龍司・著(すばる舎) 2017年6月24日発売

 

2021年1月27日読了

 

 

感想

・ページレイアウトがスッキリしていて読みやすい

・1ネタ2~4Pで紹介されているため、すき間時間にサクッと読める。

・社会人経験をある程度積んでいる場合、やや物足りないと感じるかも。正直、私は読み始めた当初「タイトルに"キホン"と書かれてはいるものの、初歩的なテクニックばかりだなあ」と感じてしまった。

・しかし、読み進めるうちに「これ、できていないかも…」「間違ったやり方で覚えていたなあ…」と感じてドキッとさせられた。

・結果的に、身についていると思い込んでいた考え方や仕事への取り組み方、フレームワークの使い方を見直す良いきっかけになったと思う。

 

印象に残ったこと

・第3章(「理論的に考える」が一発で身につく)は、先輩社員から指摘されたり、自分自身で「次はこうしよう」と反省したことのある内容ばかりだった。例えば以下のような項目。

 

・理論的でない主張は聞いてすらもらえない

・「根拠は?」と聞かれたら、どこまで切り返せるか

・データの数字を何も考えずに見つめていませんか? 

 

・どれも基本中の基本で、忘れてはいけないことばかり。しかし、業務中に自分の中でアイディアが盛り上がってしまうと、上記のような状態になっていることがある。気を付けないと…

・同じく第3章で出てくる”「ピアノを習えば頭がよくなる」は正しい?”というネタも印象的だった。これは、個々の情報の正しさだけではなく、「情報の関係の確実さ」も慎重に検討すべきだということを説いている。これもよくやっているなあ…と感じた。パッと見て関係がありそうだと感じたデータ同士を、ろくに検証もしないまま都合よく結びつけて見誤るという…

・第5章(言いたいことがいつでもきちんと伝わる!)も、聞き覚えだけでなく身に覚えのあるネタが多かった。この章では、ミーティングやプレゼンなどの場で、発言する際のテクニックが紹介されている。

・「論点がズレたまま進む会議は意外と多い」は、自社内でよく感じる。事前準備の大切さや発言する際のポイントなど、注意すべき点がまとまっていて、改めて「こういう進め方をしないように」という戒めになった。

 

覚えておきたいこと

・「報告」ではなく「主張」をする

→「売り上げが下がっています」だけでは報告。「売り上げが下がっているので~する必要があります」まで伝えて主張となる。

・主張しても、何が言いたいの?と言われてしまうことが多い場合

→「主張が整理されていない」可能性大。主張はあれこれ盛り込むと伝わりにくくなる上に、相手の時間も奪うことになるので良いことなし。 

・「ピラミッド構造」で、主張に対して複数の視点から根拠を語る

→例えば「店を開業したい」という主張をする場合、自店・顧客・競合という視点から、その主張に至った根拠を語る。主張と根拠の関係は明確にするとピラミッドのような構造になるはず。紙に書きだすとさらに頭が整理される。

 

・選択バイアス(調査対象の選択が誤っている)や確証バイアス(自分に都合の良い結論を導く傾向)を無意識にかけていないか注意する。

 

総評

・基本的かつ初歩的(わざわざ読むまでもないと感じる人もいそう)な内容が多いため、若手には刺激が多いはず。中堅以上であれば、「仕事の基本が押さえられているかの確認用」として活用することをお勧めします。

・「生産性が高い人」「思考整理」という言葉に過剰に期待しない方がいいかも。

 

 

 

 

 

予告

・今日から「インタフェースデザインの心理学」を読んでいます

・読むばかりでアウトプットが追い付いていません……

【読書ノート 002】おとぎ話の幻想挿絵

おとぎ話の幻想挿絵

海野弘/解説・監修(パイ インターナショナル) 2011年9月11日発売

2021年2月6日読了

 

 

感想

・綺麗。癒される。うっとりする…。ただ画を眺めておとぎ話の世界に浸るも良し、しっかり解説を読んで作家や作品、それらが生まれた時代背景を学ぶも良し。

・私は購入当初、「なんだか疲れたな…」という時に、心の栄養補給のために、パラパラとページをめくって画だけを楽しんでいました。日によって、目が留まる作品が違って、それはそれでおもしろかったです。そのなかでもアラステアの作品に魅せられ、『マノン・レスコー』の解説を皮切りに全ての解説を読みました。

・挿絵文化――本書で言うところの「挿絵の黄金時代」は19世紀半ばから1930年頃までを指すそう。もちろん所説あり。その間に白黒からカラー印刷への転換、優秀な画家たちの輩出、日本文化への影響や、反対に東洋文化の影響を受けたと思われる表現など、注目すべきポイントが満載です。そのあたりが丁寧に解説されています。

・また、各作品ごとの解説を読むと「こんなところにこんなものが描かれている…!」なんて、画を見るときの新しい視点も手に入っておもしろいです。それまで美しいと感じていた画が、いきなり不気味に見えたりも…。

・「不気味」という言葉を使いましたが、この本は「おとぎ話」「幻想」「ファンタジー」という言葉に反して、退廃的であったりグロテスク、不気味と感じる作品の方が多く収録されているように思います。少女は可愛らしいのに、少女を取り囲む森はちょっぴり怖かったり…。解説で得た知識ですが、当時、挿絵が施されていた絵本の多くは、子どもだけのものではなく、大人の楽しみでもあったようです。

・おとぎ話やファンタジーというと、私はなんとなくヨーロッパのイメージが強かったのですが、本書にはエキゾチックな香り満載の『アラビアン・ナイト』の画も多く登場します。東洋風の作品に限らず、孔雀や宮殿、浮世絵を連想させる表現など、じっくり見ていくとアジア的なモチーフが散見されて驚きました。とても自然に溶け込み、怪しくて妖しいおとぎ話の世界を彩っています。

・表紙の装丁が豪華。鮮やかな赤の箔押しが美しすぎる。表紙の画はウォルター・クレインによる『赤ずきん』で、本文でも紹介されています。

・表紙だけでなく、中身(約270ページ)のデザインも素晴らしいです。画家や作品ごとに異なるあしらいが施されていて、その違いを見比べる楽しさもあると言っても過言ではないほど作り込まれています。B5サイズ、フルカラーで、基本的に1ページにつき1作品+解説という構成なので、どの作品も見ごたえがあります。

 

 

 

独断と偏見に満ちた、本書に登場する作家の紹介

・アーサー・ラッカム:

少女やお姫様の描き方、特に表情が可憐で魅力的。反対に、森の描写が不気味すぎて軽くホラー。この対比がとても鮮やか。本書の中で一番「おとぎ話」「幻想」という言葉から受けるイメージに近い作風だと感じた。

 

エドマンド・デュラック:

アラビアン・ナイト』を筆頭に、エキゾチックな世界観を描く名手。アジア圏の文化に惹かれていたんだろうなと感じる。アジア風の妖艶な美女やダイナミックな構図が見事。『人魚姫』や『雪の女王』など、洋風の作品を描く際の繊細な色使いもとても綺麗…。

 

・カイ・ニールセン:

小さな顔にひょろ長い四肢で描かれる人物たちが、 コケティッシュな雰囲気。ちょっぴりおかしくもあるのに、可愛くも上品にも見えるから不思議。時期によって絵のタッチが微妙に異なるものの、やっぱりどれもオシャレです。ニールセンの絵がプリントされたTシャツとかトートバックがあったら、私は間違いなく買う。

 

・ウォルター・クレイン:

作品からも見て取れるように、ウィリアム・モリスの影響を色濃く受けている作家。私はモリスの画が好きなこともあって、表紙の『赤ずきん』に引き寄せられたのかもしれない…(表紙買い)。森や花、額縁のように画を取り囲む装飾など、職人のような仕事ぶりが光ります。

 

・ハリー・クラーク:

とても優雅で、それでいて妖艶さや退廃的な雰囲気も感じさせる作風。中二病を患ったことがある人なら、絶対に惹かれるはず。私もそう。どんどん不気味さグロテスクさが増していくので「おとぎ話とは…?」という気持ちにさせられる。描かれる人物たちの目力が強すぎてドキッとします。ちょっと心臓に悪い。

 

・アラステア:

本書に登場する作家のなかの最推し。「おとぎ話とは…?」という疑問なんてどうでもよくなるくらい、表情の色っぽさ、色使いの妖しさ、構図の大胆さ、全てに惹かれました。なぞの多い作家で、情報や書籍が少ないそう。「アラステアの作品を収録していること」を評価するレビューが目立ちました。アラステアの画がきっかけで『マノン・レスコー』が読みたくなり、ポチりました。何度見てもうっとりしてしまう、耽美な雰囲気が漂っています…(余韻)

 

・ジョン・オースティン:

ニールセンを連想させる、細い線で描かれた小さな顔や細長い手足が特徴的。でも、パキッとした色使いの画を見ると、すごくモダンというか現代のイラストっぽさを感じます。キュビズム風の作品を見ると、別人かと思うようなシュールさが。

 

 

総評

・現実逃避に最適

・見応えも読み応えも抜群

・何度見ても引き込まれ、癒されます 

 

 

 

予告

・まもなく「ブランディングの化学」を読み終えます