【読書ノート 005】インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針
インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針
Susan Weinschenk/著 武舎広幸、武舎るみ、阿部和也/訳(オライリー・ジャパン) 2012年7月17日発売
2021年2月20日読了
感想
・「2012年発行でちょっと古い本だけど、いま読む意味あるかな?」なんて一秒でも考えた自分をボコボコにしたい。学びしかなかっただろうが。
・判型が大きい上に約250ページあるので持ち運びには不向き。1行あたりの文字数も多めで、手に取った当初はなかなか読み進められなかったけれど、2章「人はどう読むのか」以降は興味が惹かれ、読むことに没頭した。
・「インタフェースデザイン」とタイトルにあるけれど、デザイナーだけではなく、何かを作る仕事に従事している方や、他者への理解を深めたい、コミュニケーション能力を強化したい方にもオススメ。
・私自身、Webサイト制作に携わりつつも、業務内容は編集者やライター寄り。それでも日々の業務に取り入れたいと思える情報がふんだんにあった。プライベートでもふとした瞬間に「これって、あの本に書いてあった通りだ…」と感じることが何度もあった。
・さまざまな論文や実験結果が紹介されていて、一見すると気難しくてとっつきにくいように思えるかもしれませんが、それは杞憂に終わるはず。なめらかな語り口とちょっとしたユーモアにあふれていて、読み物としてもおもしろい1冊です。
印象に残ったこと
1章「人はどう見るのか」より
・重要な情報は画面の上部1/3以内か中央に配置すべき。人は端を見ない。
・人は近くにあるものを「同じグループ」として見る。(以下は4章にも関連)パターンを見出そうとするし、分類することを好む。単に分類するだけではなく、「整理方法」と「整理された各カテゴリをどう呼ぶか」も重視する。
2章「人はどう読むのか」より
・読む=理解するではない。文字を読むことで理解のための手がかりを拾い、あらかじめ持っている知識に基づいて意味を予想→理解となる。
・見出しがあると、それだけで本文への理解度が格段に上がる。
・画面上の文字は紙に書かれた文字より読みにくい。画面の発光などが目を疲れさせる。
・長い行の方が早く読めるのに、多くの人は短い行を好む。その上、短い行の方が早く読めると錯覚している。
3章「人はどう記憶するのか」より
※この章は全ての項目を書き出したいくらい印象に残りました。
・ワーキングメモリ(1分足らずの間だけ覚えておく時に使う記憶)は少ない上に、集中していないとすぐに忘れる。ストレスにも弱い。
・人が一度に覚えられるのは、ワーキングメモリ・長期記憶ともに4つだけ。チャンク(まとまり)は有効だが、ひとつのチャンクに入れる情報も4つまでに留める。
・情報を覚えるには繰り返し使う必要がある。
・記憶は思い出す度に「再構築」される。同じ記憶でも、再構築の度に変化している可能性もある。
・鮮明な記憶=正しい記憶ではないけれど、記憶の持ち主は、「鮮明な記憶=正しい記憶で」と思い込んでいる場合が多い。
4章「人はどう考えるのか」より
※この章も全ての項目を書き出したいくらい印象に残りました。
・情報は少ないほどきちんと処理される。ページ遷移やクリック数が増えたとしても、情報は「段階的開示」を行うべき。視覚不可・動的不可と認知不可のバランスも考慮する。
・人は、約3割の時間はぼんやりしている。意識散漫が当然の状態であることを踏まえ、散漫な状態でも操作しやすいWebページ・読みやすい文章を心がける。
→例:パンくずリストを設置して、Webサイトのどこにいるか、注意しなくても分かる(迷子にならない)ようにする。
・自信がない場合ほど、人は強く主張する。他者の考えに対して「良くない考えである証拠」を突き付ければ突き付けるほど、相手は(自信を失い、却って)主張を強くしてしまう。
・「行き詰ったら眠る」は有効。
・「フロー状態」に入る4つの条件:①物事を自分でコントロールできる(と感じられる)状態 ②目指す目標が「困難だが達成可能」と感じられる ③絶えずフィードバックがあり、目標達成までの残りの道のりが明示されている ④気を散らすものが最小限
5章「人はどう注目するのか」より
・人は情報の取捨選択によって「どれもれこも見落とせない状況」を回避している。
・マルチタスクは原則不可能。複数の作業の「素早い切り替え」が熟練されていくだけ。
・単純な作業の繰り返しはミスにつながる。
・意力の持続は10分が限度。小休止を挟めば、また新たに10分ほど集中できる。
6章「人はどうすればヤル気になるのか」より
・目標に近づくほどヤル気が出る(実際には近付いていない"幻想"でも有効)。
・ドーパミンによって、人は情報を探索し続けようとする(情報探索中毒)。「何か起こりそう」や、予測できない出来事もドーパミンシステムを刺激。刺激が続くと心も身体も消耗する。
・人は「最良」よりも「ほどほどに満足を得られる結果」を求める。
・近道は「簡単に見つかる時」しかしない。近道が分かりづらい場合は慣れた手法に頼る。
・競争意欲は「ライバルが好きない時」に増す。
8章「人はどう感じるのか」より
・人は新しいものに注目し、思いがけないことを楽しむ。
・忙しい人の方が満足感を得ているが、忙しければなんでもいいわけではない。価値のある作業> 何もしない>>>時間つぶしのための無価値な作業
・牧歌的な風景を見ると幸せな気分になるけれど、手段によって感じる幸福度は変わる。牧歌的な場所を歩き回る>窓の外の自然を眺める>>>牧歌的な風景の写真を見る
・人はまず「見た目」で信用するか否かを決める。Webサイトの場合、デザインなどから信用できそうなサイトだと判断した場合のみ、サイトの内容(文章など)を吟味する
・人は出来事の最中よりも「その前後」の方が好き。そのため、長い休暇を1回とるよりも短い休暇を数回とった方が楽しめる。
総評
・心得ておきたいことばかりなので、手元において何度も読み返したい。「ページwパラパラめくって、その時気になった項目を読む」でも十分勉強になる&楽しめそう。
・借りものだったけれど、読み終えてからAmazonでポチりました。
・冒頭にも書いた通り、デザイナーでもノンデザイナーでも、立場問わず学べることの多い1冊です。
予告
・並行して読んでいた「マノン・レスコー」も本日読了。
・今日から「次世代コミュニケーションプランニング」を読んでいます。