書きたいときに書きたいことを書きたいだけ。

元編集者兼ライターで、現在はWebサイト制作・運用に携わるピーターが気になったあれこれや、日々感じたことについて。最近ちょっとだけまじめ。Twitter@PeterK723

【読書ノート 003】会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

井上龍司・著(すばる舎) 2017年6月24日発売

 

2021年1月27日読了

 

 

感想

・ページレイアウトがスッキリしていて読みやすい

・1ネタ2~4Pで紹介されているため、すき間時間にサクッと読める。

・社会人経験をある程度積んでいる場合、やや物足りないと感じるかも。正直、私は読み始めた当初「タイトルに"キホン"と書かれてはいるものの、初歩的なテクニックばかりだなあ」と感じてしまった。

・しかし、読み進めるうちに「これ、できていないかも…」「間違ったやり方で覚えていたなあ…」と感じてドキッとさせられた。

・結果的に、身についていると思い込んでいた考え方や仕事への取り組み方、フレームワークの使い方を見直す良いきっかけになったと思う。

 

印象に残ったこと

・第3章(「理論的に考える」が一発で身につく)は、先輩社員から指摘されたり、自分自身で「次はこうしよう」と反省したことのある内容ばかりだった。例えば以下のような項目。

 

・理論的でない主張は聞いてすらもらえない

・「根拠は?」と聞かれたら、どこまで切り返せるか

・データの数字を何も考えずに見つめていませんか? 

 

・どれも基本中の基本で、忘れてはいけないことばかり。しかし、業務中に自分の中でアイディアが盛り上がってしまうと、上記のような状態になっていることがある。気を付けないと…

・同じく第3章で出てくる”「ピアノを習えば頭がよくなる」は正しい?”というネタも印象的だった。これは、個々の情報の正しさだけではなく、「情報の関係の確実さ」も慎重に検討すべきだということを説いている。これもよくやっているなあ…と感じた。パッと見て関係がありそうだと感じたデータ同士を、ろくに検証もしないまま都合よく結びつけて見誤るという…

・第5章(言いたいことがいつでもきちんと伝わる!)も、聞き覚えだけでなく身に覚えのあるネタが多かった。この章では、ミーティングやプレゼンなどの場で、発言する際のテクニックが紹介されている。

・「論点がズレたまま進む会議は意外と多い」は、自社内でよく感じる。事前準備の大切さや発言する際のポイントなど、注意すべき点がまとまっていて、改めて「こういう進め方をしないように」という戒めになった。

 

覚えておきたいこと

・「報告」ではなく「主張」をする

→「売り上げが下がっています」だけでは報告。「売り上げが下がっているので~する必要があります」まで伝えて主張となる。

・主張しても、何が言いたいの?と言われてしまうことが多い場合

→「主張が整理されていない」可能性大。主張はあれこれ盛り込むと伝わりにくくなる上に、相手の時間も奪うことになるので良いことなし。 

・「ピラミッド構造」で、主張に対して複数の視点から根拠を語る

→例えば「店を開業したい」という主張をする場合、自店・顧客・競合という視点から、その主張に至った根拠を語る。主張と根拠の関係は明確にするとピラミッドのような構造になるはず。紙に書きだすとさらに頭が整理される。

 

・選択バイアス(調査対象の選択が誤っている)や確証バイアス(自分に都合の良い結論を導く傾向)を無意識にかけていないか注意する。

 

総評

・基本的かつ初歩的(わざわざ読むまでもないと感じる人もいそう)な内容が多いため、若手には刺激が多いはず。中堅以上であれば、「仕事の基本が押さえられているかの確認用」として活用することをお勧めします。

・「生産性が高い人」「思考整理」という言葉に過剰に期待しない方がいいかも。

 

 

 

 

 

予告

・今日から「インタフェースデザインの心理学」を読んでいます

・読むばかりでアウトプットが追い付いていません……

【読書ノート 002】おとぎ話の幻想挿絵

おとぎ話の幻想挿絵

海野弘/解説・監修(パイ インターナショナル) 2011年9月11日発売

2021年2月6日読了

 

 

感想

・綺麗。癒される。うっとりする…。ただ画を眺めておとぎ話の世界に浸るも良し、しっかり解説を読んで作家や作品、それらが生まれた時代背景を学ぶも良し。

・私は購入当初、「なんだか疲れたな…」という時に、心の栄養補給のために、パラパラとページをめくって画だけを楽しんでいました。日によって、目が留まる作品が違って、それはそれでおもしろかったです。そのなかでもアラステアの作品に魅せられ、『マノン・レスコー』の解説を皮切りに全ての解説を読みました。

・挿絵文化――本書で言うところの「挿絵の黄金時代」は19世紀半ばから1930年頃までを指すそう。もちろん所説あり。その間に白黒からカラー印刷への転換、優秀な画家たちの輩出、日本文化への影響や、反対に東洋文化の影響を受けたと思われる表現など、注目すべきポイントが満載です。そのあたりが丁寧に解説されています。

・また、各作品ごとの解説を読むと「こんなところにこんなものが描かれている…!」なんて、画を見るときの新しい視点も手に入っておもしろいです。それまで美しいと感じていた画が、いきなり不気味に見えたりも…。

・「不気味」という言葉を使いましたが、この本は「おとぎ話」「幻想」「ファンタジー」という言葉に反して、退廃的であったりグロテスク、不気味と感じる作品の方が多く収録されているように思います。少女は可愛らしいのに、少女を取り囲む森はちょっぴり怖かったり…。解説で得た知識ですが、当時、挿絵が施されていた絵本の多くは、子どもだけのものではなく、大人の楽しみでもあったようです。

・おとぎ話やファンタジーというと、私はなんとなくヨーロッパのイメージが強かったのですが、本書にはエキゾチックな香り満載の『アラビアン・ナイト』の画も多く登場します。東洋風の作品に限らず、孔雀や宮殿、浮世絵を連想させる表現など、じっくり見ていくとアジア的なモチーフが散見されて驚きました。とても自然に溶け込み、怪しくて妖しいおとぎ話の世界を彩っています。

・表紙の装丁が豪華。鮮やかな赤の箔押しが美しすぎる。表紙の画はウォルター・クレインによる『赤ずきん』で、本文でも紹介されています。

・表紙だけでなく、中身(約270ページ)のデザインも素晴らしいです。画家や作品ごとに異なるあしらいが施されていて、その違いを見比べる楽しさもあると言っても過言ではないほど作り込まれています。B5サイズ、フルカラーで、基本的に1ページにつき1作品+解説という構成なので、どの作品も見ごたえがあります。

 

 

 

独断と偏見に満ちた、本書に登場する作家の紹介

・アーサー・ラッカム:

少女やお姫様の描き方、特に表情が可憐で魅力的。反対に、森の描写が不気味すぎて軽くホラー。この対比がとても鮮やか。本書の中で一番「おとぎ話」「幻想」という言葉から受けるイメージに近い作風だと感じた。

 

エドマンド・デュラック:

アラビアン・ナイト』を筆頭に、エキゾチックな世界観を描く名手。アジア圏の文化に惹かれていたんだろうなと感じる。アジア風の妖艶な美女やダイナミックな構図が見事。『人魚姫』や『雪の女王』など、洋風の作品を描く際の繊細な色使いもとても綺麗…。

 

・カイ・ニールセン:

小さな顔にひょろ長い四肢で描かれる人物たちが、 コケティッシュな雰囲気。ちょっぴりおかしくもあるのに、可愛くも上品にも見えるから不思議。時期によって絵のタッチが微妙に異なるものの、やっぱりどれもオシャレです。ニールセンの絵がプリントされたTシャツとかトートバックがあったら、私は間違いなく買う。

 

・ウォルター・クレイン:

作品からも見て取れるように、ウィリアム・モリスの影響を色濃く受けている作家。私はモリスの画が好きなこともあって、表紙の『赤ずきん』に引き寄せられたのかもしれない…(表紙買い)。森や花、額縁のように画を取り囲む装飾など、職人のような仕事ぶりが光ります。

 

・ハリー・クラーク:

とても優雅で、それでいて妖艶さや退廃的な雰囲気も感じさせる作風。中二病を患ったことがある人なら、絶対に惹かれるはず。私もそう。どんどん不気味さグロテスクさが増していくので「おとぎ話とは…?」という気持ちにさせられる。描かれる人物たちの目力が強すぎてドキッとします。ちょっと心臓に悪い。

 

・アラステア:

本書に登場する作家のなかの最推し。「おとぎ話とは…?」という疑問なんてどうでもよくなるくらい、表情の色っぽさ、色使いの妖しさ、構図の大胆さ、全てに惹かれました。なぞの多い作家で、情報や書籍が少ないそう。「アラステアの作品を収録していること」を評価するレビューが目立ちました。アラステアの画がきっかけで『マノン・レスコー』が読みたくなり、ポチりました。何度見てもうっとりしてしまう、耽美な雰囲気が漂っています…(余韻)

 

・ジョン・オースティン:

ニールセンを連想させる、細い線で描かれた小さな顔や細長い手足が特徴的。でも、パキッとした色使いの画を見ると、すごくモダンというか現代のイラストっぽさを感じます。キュビズム風の作品を見ると、別人かと思うようなシュールさが。

 

 

総評

・現実逃避に最適

・見応えも読み応えも抜群

・何度見ても引き込まれ、癒されます 

 

 

 

予告

・まもなく「ブランディングの化学」を読み終えます

 

【読書ノート 001】「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ

「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ

玉樹真一郎 ・著(ダイヤモンド社) 2019年8月8日発売

 

2021年1月30日読了

 

 

感想

・1ページあたりの文字数が少なく(おそらく意図的に)、ラフな語り口なので読みやすい

・著者によるゆるめの手描きイラストや、解説している内容を読者も体験できるようにと例題がふんだんに用意されていて飽きない

・「スーパーマリオ」や「ドラクエ」など、コアなゲームファンでなくても聞いたことがあるようなタイトル、キャラクターが複数登場する

・それらのゲームに施されている、人の心をつかむための手法(体験デザイン)が解説されていて楽しい

・巻末の応用編・参考資料は、本編とはレイアウトやデザインが異なっていて、最後の最後まで凝った作り

・300ページ超えの書籍だが、最後まで夢中になって読めた。積み本にしていたことを後悔&反省…

 

 

印象に残ったこと

・「ついやってしまう」という感覚には、そうなるための仕組みがあることを知った。多くの仕組みが緻密に設計されている。ユーザーを夢中にさせたり熱中させる商品・サービスは偶然の産物ではなく、仕組み作りと真剣に向き合った作り手側の功績。

・つまり、ユーザーが感じる「ついやってしまう」という感覚は、ある程度コントロールできる。「カワイイ」だけでなく、夢中や熱中も作れる。

・仕組み作りのポイントとして本書であげているのが、タイトルでも掲げている「直感・驚き・物語」。この3つの体験をデザインすることが大切。キーワードだけ並べてもピンときづらいが、どの項目も細分化して丁寧に解説されている。

・例えば、「直感」は3つの体験から構成されていて、人の内面と紐づく2つ必須要素も存在する。これだけ書くと小難しく感じさせてしまいそうだが、多くの人が無意識に経験していることを読み手に寄り添いながら説明していくので、読めばきっとㇲッと理解できるはず。

・私は、自分が経験した「ついやってしまった(もちろん良い意味で)」の仕組みが明確になって、とてもすっきりした。感動もした。偶然生じた感覚ではなく、「ついやってしまう」ことがデザインできる(=意図的に作り出せる)ってすごい。気付いていないだけで、自分の身近にもいっぱい体験のデザインは潜んでいるのだと思う。探したい。

・編集者的なことやWebサイト制作に携わる身なので、自分の仕事にも活かしていきたい。むしろ、そこまでやってこその「サービス提供」なのだと感じた。

 

 

覚えておきたいこと

・体験のデザインはユーザーを起点に行うしかない

・商品やサービスの「良さ・正しさ」を伝えるよりも、ユーザーが商品やサービスとの関わり方を「理解する」ことが最優先

・物語の要は「何があったか」「どう伝えるか」

・ゲームは、ゲームの主人公が成長していく架空の物語ではなく、プレイヤー自身が成長していく「プレイヤーの物語」→これがゲームを遊ぶ意義

・記憶は過去形、体験は「記憶の現在形」

 

 

出てくる用語(忘備録)

アフォーダンス:何かを見たときに思い浮かぶ「~するのかな」という気持ち

・シグニファイア:アフォーダンスを与えることに特化した情報

・初頭効果:体験の最初の頃が、もっとも集中力や学習効率が高まる

・心的飽和、馴化:同じ刺激が何度も繰り返されると反応が徐々に弱まっていく(疲れや飽きの蓄積につながる)

・ナラティブ(物語)=ストーリー(物語内容)+ディスコース(物語言説)

・環境ストーリーテリング:環境の中に配置された情報を、ユーザーが自主的に集めながら物語を構築していくこと

ミラーニューロン:(ざっくり言えば)他者の感情を自分のことのように感じる心の動きを司る神経

 

 

総評

・おもしろい!!!!!

・人に勧めたい(表紙やタイトルに惹かれた方、このブログを読んで少しでも中身が気になった方はぜひ)

・定期的に読み返したい(例えば仕事で文章を書きながら「このサービス、どうやったら魅力的に感じてもらえるかな…」なんて悩んだときに)

 

 

 

 

予告

・現在読んでいるのは「ブランディングの化学

・次の読書ノートは、この中のどれか(曖昧)